フラジール
少女は、ふと窓を見上げた。
窓の外には、怪しい明かりを灯す恍惚(こうこつ)な月と、闇夜にまばゆい光をばら撒く星々だけが浮かんでいる。
月明かりの下(もと)で、2匹の蝶がじゃれ合いながら踊っている。
光のない少女の目は、その蝶達の異変を捉えた。
一方は、その瞬間の喜劇に身を任せていた。――明日のことは知らぬとでもいうように。
しかしもう一方は、戯曲のエンド・ロールに苦悩していた。――悲劇を案ずるように。
誰も知らない。――眠っていた世界が再び動き出した後の、蝶達の行方を。