私、悪女になります
「で、また振られたのか?」

「…うん…」


通算10度目を超える失恋。
その原因は全て、美しすぎる姉である。
姉に近づくために私に近づく人。
付き合ってから姉に会い、別れを申し出る人。
私はお姉ちゃんがいる限り、まともな恋愛が出来ないのだろうか。


「まあ、確かに香澄さんは美人だからなあ。男なら、誰でも一度くらい夢見るだろ。あんな美人と付き合えたらって」


頬杖をつきながら、呆れたようにそう言ったのは、幼馴染みの菊池祐介(きくちゆうすけ)である。
フレらる度、私はコイツに弱音を零しているのだ。


「…そ、そんなこと分かってるよ…。どうせ私はお姉ちゃんと違ってブスだし、性格も悪いし…」

「お前な、そうやって悲観的になるのやめろよ。誰もブスだなんて言ってねえだろ」

「でも、皆私を見て言うもん。“お姉さんの方が綺麗だね”って」

「それは…まあ香澄さんと比べればってことだろ?普通に見りゃ、由香里だって十分可愛い方だろ」


幼馴染みとはいえ、褒めてもらえるのは嬉しい。
でも、どうしても素直に受け取ることができない。
だって、お姉ちゃんと比べなければ、なんてこと、私には有り得ないから。
お姉ちゃんがいる限り、私はお姉ちゃんと比べられ続けるのだから。

大きなため息をついて、窓の外に目を向ける。
平日のお昼のカフェから見える外は、なんだか慌ただしい。


「…お姉ちゃんに、何か…勝てればいいのに」


小さく呟いた声は祐介にだって聞こえていないだろう。
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