私、悪女になります
「だったら、見返してやりなさいよ」

「…へ?」


不意に背後から聞こえてきた声に、祐介と2人で振り向くと、私に背を向けるようにして座っていたのは、大学の先輩である、友梨さんだった。


「ゆ、友梨さん…?なんでここに…?」

「偶然よ、偶然」


ソーサーからカップを持ち上げ、優雅にコーヒーを飲む友梨さんの姿は、まるで雑誌のワンカットのように絵になっている。
友梨さんは、私の2つ上の先輩で、お姉ちゃんの3つ下の後輩。
お姉ちゃんとは、また違ったタイプの美人で、モデルのように長い手足と整った顔立ちをしている。
飲んでいたコーヒーをゆっくりとソーサーに戻した友梨さんは、整った唇でにっこりと弧を描いた。


「香澄、悔しいんでしょ?だったら、見返してやりなさいよ。アンタのことを振った男どもを」

「み、見返すって…そんなことどうやって…」

「簡単よ」


友梨さんの長い指が私の目の前に突き出される。
目を丸くして友梨さんを見返すと、自信たっぷりの笑みを浮かべた友梨さんがゆっくりと唇を開いた。


「今度は、あんたが騙してやるの」
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