ひとりぼっち
真ん中の上り坂は、最初の上り坂に比べれば何茶無い。

最後の坂は自転車を押していくので平気だ。


『あー、疲れた!』

「だね。いつ慣れるかな」

『夏休み頃じゃん?それまで頑張らなきゃな~』


私は「ははっ」っと気を紛らわすように笑った。

加奈は口角を少しあげ、目を細めて笑った。

声はない。


『あっつぅー…制服気持ち悪ぃ…』

「だね~…これからもっとだよぉ~…」


加奈は飽きれ混じりの声をあげる。

制服の首の回りを指に引っ掛け、ぱたぱたと風をおこした。

それでも暑さは紛れない。
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