この恋からは絶対に逃げられない!?
「おはようございます」
朝のオフィスは慌ただしい。
朝礼もまだなのにあちこちで
仕事の打ち合わせが行われている。
自分の席に荷物を置いてパソコンを開く。
昨日から今日にかけてのメールを確認していると、
さっき別れたはずの
朱里が紙の束を抱えながらやってきた。
「どうしたの?」
「さっき言い忘れたわ。追加でお願いがあるんだけど」
そう言いながら急にきょろきょろと辺りを見回す。
どうやら誰かを探しているみたいだ。
朱里の事だ、初子みたいにミーハーな気持ちはないと思うけど。
「言っておくけど。新しくくる人捜しているわけじゃないからね」
「じゃあどうしたの?」
「まだ来てなさそうだし。これあんたの上司に渡しておいて」
そう言われて束を受け取る。
これはなに?と聞くと朱里が大きくため息をついた。
「今度東北地方に新店舗オープンするでしょう?で、同じような場所に建てられた
店舗の過去5年の店舗の進捗が知りたいって言われてさ」
「分かった。渡すね」
「よろしく」
手を振りながら戻っていく同期を見送って再び資料に目を通した。
3年目に目を通そうとしたその時、おはよう、と上機嫌な声で
上司が入って来た。
始業時間ギリギリのご出社ですか。
「おはようございます、長谷川さん」
朱理から受け取った資料を持って上司である長谷川さんのもとへと向かう。
長谷川さんは私の顔を見ると急に顔をしかめて
鞄から何か紙を取り出した。
「有川さん、これ纏めといて」
挨拶もなしにいきなり私に差し出す。
いえ、その前にあなたに渡したいものがあるんですけど。
なんて言葉はこの人に通用しないし
万が一にも口に出せば5倍になっていちゃもんをつけられるのだ。
とりあえず差し出された資料を受け取り、ぱらぱらと捲る。