ホワイトデーの約束
「っ!?」


顔をあげてその人と目があった瞬間、睡魔は一気に飛んでいった。
ほぼ密着状態の近さに息を飲み、アルコールのせいではない火照りが体を覆っていく。

あれ、なんかデジャヴ?


「とりあえず、お前はもう飲むな」


隣に座った瓜生先輩は私から梅チューハイを取り上げると、代わりにウーロン茶を持たせた。
頭はパニックけど、とりあえず先輩がイライラしているのだけはわかった。

うん、今日はもうお酒やめよう。


「あの、どうして、だってお仕事だったんじゃ」
「気合で終わらせてきた」


気合って・・・先輩には珍しい言葉の選び方だな。


「どっかの馬鹿が、わけのわからんメールを送ってきたからな」
「おいおい、それって俺のことかよ」
「お前以外に誰がいるんだよ」


低い声でジロー先輩を睨みつける瓜生先輩は実に不機嫌そう。
だけどジロー先輩はそれに怯みもせず、サラリと受け流す。


「ははっ、そう睨むなよ。俺なりの優しさだっつーの」
「そんなものはいらん」


私を挟んでテンポのいい会話を始めた二人はやっぱり仲がいい。

メールってどんなのだったんだろう?
気になるけど、聞くタイミングが掴めない。
< 10 / 22 >

この作品をシェア

pagetop