ホワイトデーの約束
「あれ?真人くんじゃない!」


声を上げたのは宮原先輩だった。後ろのテーブルにいた宮原先輩は、私が座る反対側、瓜生先輩の左側に腰を下ろした。
それに気づいた他の人達も、わらわらと私たちのテーブルへ集まってくる。


「お、ホントだ!なんだよ来るなら連絡寄越せよ」
「久しぶりだな!」


瓜生先輩は前回のOB会も欠席していたからか、あっちこっちから質問攻めが始まった。

私は瓜生先輩の横で宮原先輩が笑っているのを見ていたくなくて、目の前にあった枝豆をただ無心で口に運んでいた。



「瓜生先輩!さっき盛り上がってたんですけど、今って彼女いるんですか?」
「あぁ、いるよ」


ポンッと大きな手が頭の上に置かれる。


「コイツ。俺のだから、手出すなよ」


一瞬にして、その場が静まり返る。

皆一様に呆気にとられた様子で、8つ目の枝豆に手を伸ばしていた私も固まっていた。


「そういうことで、今日はもう帰らせてもう。コイツ迎えに来るついでに少し顔出しただけだから」


瓜生先輩は明らかに多すぎる金額を机に置き、私を立たせて二人分の荷物を持つ。


「じぁまた今度ゆっくり」


そう最後に一言告げて、何事もなかったように私の手を引いて店を後にした。
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