ホワイトデーの約束
近くのパーキングエリアに止めてあった先輩の車に乗せられ、さっきの光景が思い浮かぶ。
私、やっぱり、先輩の彼女なんだよね。

運転席に乗り込んだ先輩は、エンジンをかけるでもなく、ただシートに体を預けていた。
さっきからひっきりなしに届くメッセージの通知だけが車内に鳴り響く。
何か言わなきゃと思った時、先輩がハンドルにもたれながら大きく息を吐いた。


「どうして、どうしてアイツじゃなくて俺に言わないんだ?」
「え?」


苦しそうに眉根を寄せた先輩と視線が絡む。


「"寂しい"と」


あぁ、そっか。ジロー先輩から聞いたんだ。

奥のほうから気持ちが迫り上がってきて、胸が苦しい。

もう、無理だ。
知られてしまったのなら、もう、耐えることなんてできない。


「・・・・・・さ、みしかったん、です」


言葉にした瞬間、堰を切ったように涙がボロボロと溢れ出す。


「あの日も、ホントは、すごく悲しくて、ずっと寂しかったんです!
先輩に会いたくて、声を、名前を、呼んでほしくてっ」


鼻をすすっては、嗚咽が漏れるのは抑えられない。
なんて、みっともない。


「でも、困らせてくなくて、先輩に、きっ嫌われたくなかったから――」
「本当に馬鹿だな、お前は」

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