ホワイトデーの約束
朝食は外で済ませるらしく、さっそく出かける準備を整える。

彼とのホワイトデーのために買った白のニットワンピは、昨日慌ててタンスの奥から引っ張り出した。それにワインレッドのロングコートを重ねて、あの日と同じように髪をアップにする。

私たちにとって、今日が本当のホワイトデーだ。


化粧を済ませて脱衣所を出る。
そして、既に準備を終えているであろう彼が待つリビングへと急いだ。


「お待せしました」
「そんなに急がなくていいと言っただろう」


小さく笑いをこぼしてソファから立ち上がった彼は、いつもの黒いロングコートを羽織り、その下にグレーのニットを覗かせる。
スキニージーンズがスラリと長い足を強調していた。
こんな素敵な彼と今日一日、一緒にいられると思うと嬉しい反面、緊張を抑えられない。


「香奈」
「は、はい!」


そっと頬に添えられる手が少し冷たい。
彼は熱い視線を寄越した後、額にキスを落として、私の手をとる。


「行こうか」
「は、はぃ・・・」


無理だ。絶対に心臓がもたない。
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