ホワイトデーの約束
映画館で私が見たがっていたハリウッド映画を見た後、カフェで軽いランチを食べた。

口数の少ない先輩だけど、私の話を楽しそうに聞いてくれるのが嬉しかった。

時間が経つのはあっという間で、彼が仕事に行く時間が近づいたために、駅まで戻ろうとしていた途中だった。


「14日の夜、空けておいてくれるか?」


何の前触れもなく尋ねられ、思わず「え?」と聞き返す。


「仕事を終えてからだから少し遅くなるかもしれないが、久しぶりにゆっくり食事をしよう。いい店を見つけたんだ」


期待、してなかったわけじゃない。
ただ最近の彼は本当に忙しそうだから、もしかしたらホワイトデーはないかもしれないと思っていた。

口角が勝手に上がってしまう。


「はい!楽しみにしてますね」


少し興奮気味に返すと、先輩が突然歩みを止めたため、驚いて振り返る。


「そんな可愛い顔をするな。抑えがきかなくなる」
「か、かわっ―!」


急に暴れだした心臓を落ち着ける暇もなく、繋いでいた手を引かれ抱きしめられる。
彼の匂いに包まれて、クラクラしてしまう。

付き合い始めてから知ったこと、先輩は思っていた以上に感情をストレートに表す。

それを嬉しく感じながらも通行人から向けられる視線に耐え切れず、未だ離れる気配のない先輩に声をかける。


「あの、見られてますから・・・」
「全くだ。公衆の場じゃなければ、今すぐキスできるんだがな」


なんとも忌々しそうに言われて、顔に熱が集中してしまう。


少し歩いたら、もう目的の駅に着いてしまい、仕事へ向かう彼を送り出した。
短い時間のデートだったけれど、最後に彼と交わした約束のお陰で鼻歌でも歌えそうな気分だった
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