ホワイトデーの約束
「そーいや、瓜生ってモテるのに彼女作らなかったよな」


それに反応した宮原先輩の言葉が私の心に刺さる。


「そうだったね!まだ彼女いないのかな?香奈ちゃん、知ってる?」


そんなに可愛らしく尋ねないでほしい。
最近のこともあって、本当に自分が瓜生先輩の彼女でいいのかわからなくなってくる。


「さぁ、どうでしょう?一応、いるみたいですけど・・・」


今、瓜生先輩とのことを詮索されるのは、正直きつい。
だからこれが私なりの精一杯の牽制だったんだけど、それはあまり意味を成さなかった。


「あんなイケメンと釣り合う彼女ってなかなかいないよね」
「どんな人なんだろう。やっぱりすごい美人なのかな」


皆が話し始めた"瓜生先輩の彼女像"に耳を塞ぎたくなる。


「でも、宮原先輩と瓜生先輩ならお似合いですよね!」


その一言に皆が同調しながら、宮原先輩をはやし立て始める。
宮原先輩も「そんなことないよー」と言いながら、満更でもない様子だ。


はぁ、もうイヤだな、この空気。


「まぁまぁ!ここに居ないヤツの話しても仕方ねぇって!
それよりもさ――」


ドンッと大きなビールジョッキが横に置かれたかと思うと、威勢のいい声が会話を遮った。

場の空気を変えてくれたのは金崎仁朗(かねさきじろう)先輩。皆にジローと呼ばれていて、瓜生先輩と同学年だ。
茶目っ気の多い彼はサークルのムードメーカーで、クールな瓜生先輩とは対照的な人だけど、何故か二人は仲が良かった。


話題が完全に瓜生先輩から反れると、ホッと息をつく。
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