ホワイトデーの約束
半日デートからホワイトデー、そして今日に至るまでを、愚痴るように話したのにジロー先輩はずっと「うん、うん」と聞いてくれた。


「そりぁ、仕事が忙しいのはわかってますよ。でも、あれからメールも電話もないなんて、仕事でだって最近は話せてないし・・・私、先輩に忘れられちゃったんでしょか?」
「いや、それは絶対にないから」


ジロー先輩はそう言ってくれるけど、やっぱり自信がない。


「なんにせよ、悪いのは真人のヤツだな。橘ちゃん、アイツに言ったの?"寂しい"って」
「言えるわけ、ないじゃないですか・・・私が勝手に寂しがってるだけで、先輩が忙しいっていうのは分かってるんですから」


何だかやるせない気分になって、ついさっき運ばれてきた梅チューハイを一気に半分ほど飲み干す。

やばい、ちょっと飲みすぎたかな。
頭がクラっとする。


「・・・すい、ません。なんか、眠くなってきちゃって」


最近寝つきが悪かったせいか、酔いが回ると突然、睡魔がやってきた。


「ちょっと、肩、貸してください」
「えっ、橘ちゃん!?」


ちょうどいい位置にあるジロー先輩の肩にコテンと頭を乗せる。


「ちょっ、ちょっと橘ちゃん、マジで離れよう」


急に焦りはじめたジロー先輩は、私を無理やり引きはがそうとする。
それになんだがちょっとムッとして、ジロー先輩に詰め寄る。


「いいじゃないですか、少しくらい寝かせてくださいよ」
「ダメだ。寝るなら俺の肩にしろ」


ずっと聞きたいと思っていた声と共に、肩を強く抱き寄せられる。
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