情熱的に愛して
私が立ち上がろうとすると、奴の方が先に立ち上がった。

「いいよ。自分の分は、自分で持ってくる。」

そう言って、冷蔵庫に向かう背中を見ると、なんだか寂しくなった。

私には、そう言う事も頼めないって言うのか?


「なに?」

席に戻ってきた奴は、早速ビール缶の蓋を開けている。

「いや、気を遣わなくていいのに。」

「そっちこそ、余計な気遣いは不要。」

私は、大きなため息をついた。

「親切で持って来てあげようと思うのが、余計な事?」

不穏な空気が流れる。

同居一日目から、喧嘩か?


「……俺達さ。好きで同居してる訳じゃないだろ。」

「うん。」

「だから、お互いに気を遣い過ぎると、ダメになると思うんだ。」
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