あっちじゃなくて、俺のほう向いて。
「ほらー、先輩、芽依ちゃんまた困ってますよ。」


お茶をもったまま、芳樹くんはさりげなく私を後ろにかばって

小声で私に、大丈夫?ときいた。


「あ、ありがと…。」

「芽依ちゃんが困った顔してたから、どーしたかと思って。」

「ちょっと話してた、だけ。」


この時の私はまだ気づいていなかった。

"好きな人"その言葉で

自分が誰のことを思い浮かべていたのかを。
< 176 / 594 >

この作品をシェア

pagetop