あっちじゃなくて、俺のほう向いて。
「着いたっと…。」


プライバシーを守るためなのか、部屋の中から声はしない。

俺は、深呼吸したあと

コンコン、とノックしてから病室のドアを開けた。


「あっ、こっちも美味しいですよ、お母さん。」

「ほんとー?こっちも美味しいわよ、はい、半分。」

「え、百合にもちょうだい!」


中では、俺が入っても気づかないくらい

和気あいあいと話す、3人の姿があった。


[芳樹side end]
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