【短】桜の涙に恋焦がれ

 花見が始まるのは早くても午後六時。
 お弁当が到着するまで耐えられるだろうか。いや、弁当が届いたとしても食べられるかどうかわからない。


 だって、わたしは短大卒なんだから。



「むなしい」



 頭上にある桜は綺麗で、雨から守ってくれるそれが優しくて、ずっと胸の中に溜めていたものが溢れてしまいそうだった。


 大学に行けば仕事が出来るの?
 短大に行ったら雑用しか任せてもらえない?
 短大ってだけでそんなに馬鹿にされるなら、わたしは何のために通っていたの?
 高卒だったら、若くてチヤホヤされて上司のお気に入りになれたの?


 馬鹿みたい。
 わたしはそんなふうになりたいから社会人になったわけじゃないのに。


 安易に短大に決めるんじゃなかったって、今まさに後悔してる。

< 2 / 17 >

この作品をシェア

pagetop