【短】桜の涙に恋焦がれ

 ホットコーヒーを飲んだり、肉まんを食べたりしている間も無口。でも、そろそろ時間が気になる。


 こんな場所に拘束して遅刻したなんてことになったら、責められるのは多分わたし。



「柳瀬くん、本当にそろそろ帰らないと午後の業務に遅れる」

「帰れません」



 いやにはっきりと言う。
 帰れないって、上司連中に何かを頼まれたのかな。いや、柳瀬くんに雑務を頼むことはないか。



「雨、やみそうもないし。早く行った方がいいよ」

「死にたいって……」

「え?」

「死にたいなんて嘘でも言ってしまうほど、咲川さんは参ってるんじゃないんですか?」



 聞かれてたんだ。
 本気じゃない言葉だったけど、やっぱり本気だったのかな。いや、本気だったらもう死んでる。


 死にたくはないけど、生きたくもない?
 あー、それがしっくりくるかも。
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