雨女と机



火曜日、今日は晴れ。


家から地元の駅まで自転車で15分。


電車に乗って終点まで15分。


バスに乗って学校まで20分。


何も変わらない朝。


いつも通り友人とわいわい話しながら朝読書の時間まで待つ。


チャイムが鳴って、沈黙する教室。


小説を開く人もいれば漫画本を開く人、今日提出のはずの宿題を片付ける人、様々。


いつもと何も変わらない。


わたしも短編小説集を開く。


いつもと何も変わらない。


ふと、机に違和感を感じた。


昨日の落書きは面倒なので消さずに残しておいた。


雨に濡れて泣いている猫の絵。


どうしたことか、その猫に傘を差し出すうさぎの絵が描いてある。


誰が書いたのだろう、人の机なのに。


何て思ったけれど、正直何だか心温まるものを感じた。


嬉しかったので、


(ありがとう。)


と、猫にふきだしを書いて、読書を再開。


今日が終わってもいつもと何も変わらない。


机に物語が発生したこと以外は。


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