子犬とクマのワルツ
「すまん。同期の奥さんだからって油断してた」
「えっ」
意外そうな顔で俺を見上げている。
クリッとした大きな瞳が、一層可愛らしさを増す。
「お、奥さん…」
「そうだよ。何だと思ったの?」
顔を隠そうと俯きかける史乃の頬を、右手で軽くつまんだ。
「彰人さん、モテるから…。いつも女の子が見てるし」
「ブハッ」
俺は堪えきれずに吹き出した。
こんなデカイだけの平凡な男をモテると心配するのは、彼女くらいのものだ。
女性社員に見られてるのは、ただデカくて目立つからだ。
「俺、女子にクマって呼ばれてるんだけど。…そんなこと言ったら、史乃だって」
「?」
話の流れがイマイチ掴めないのか、史乃は首を傾げた。
そういう仕草にいちいちドギマギしているのが俺だけとは限らない。