子犬とクマのワルツ
「みんなに可愛がられてるのはわかるけど、本気になる男がいるんじゃないかっていつもヒヤヒヤしてるんだけど」
今度は史乃が笑う番だった。
「そんなわけないです」と、鈴が転がるように笑う。
それを見ながら、思う。
『高山は、主任大好きっ子』?
『高山の片思い』?
俺の方がよっぽど史乃に夢中だ。
「史乃、今日は俺の家に泊まって」
もう一度、彼女の首元に顔を押し付けて抱きしめなおす。
小さな声で、「はい」と聞こえた。
これ以上抱きしめていたら、離れられなくなる。
俺は仕方なく彼女を腕から解放した。
少し顔を赤くしている史乃のおでこにキスをして、「戻ろうか」と促す。
唇にキスなんかしたら、それこそ止まれる自信がなかった。
「…はい」
更に赤くなった顔を前髪で隠そうと引っ張りながら、史乃は俺に続いて会議室を出た。