子犬とクマのワルツ


俺は殊更に興味ないふりをしなければならなかった。

「まあ、何事にも一生懸命なワンコって感じだな」

答えになっていないような言葉を紡いで、パソコンに目を落とし、報告書のフォーマットを開いた。
これ以上はあまり突っ込んでくれるなと祈りながら。

「主任って結構、罪な男ですね」

尾関はつまらなそうに息をついて、仕事に戻る。
カタカタとキーボードを打つ音、電話のベル、話し声。程よいザワつきの中で、俺は長く安堵のため息をつく。

そっと頭を抱え、能天気で無邪気な彼女を盗み見た。

彼女の「片思い」は、あまりにも有名だ。



< 7 / 16 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop