子犬とクマのワルツ
銀色のパンダ
11時を過ぎた頃、販売促進部から先月分の売上と販売集計が出来上がったと、連絡が入った。
「クマ…園部主任、こちらがデータです」
背中近くまである長いストレートヘアをさらりと揺らしながら、先輩社員は紙の束を差し出した。
隙のないメイクと服装に、造作の整った顔の美女である彼女は、男性女性問わず惚れ惚れとするような笑顔で小首を傾げている。
「いつもありがとうございます」
クマと言いかけたのは、目をやっただけで何も言わずにおいた。
「クマくん、いつまで経っても態度かたいなー」
吹き出すように笑った彼女は、俺の肩をばしばしと叩いた。
そして、返事も聞かずに「またねー」と手を振りながらフロアを出て行く。
緩急の激しい態度は、いつまで経っても慣れないでいる。