珈琲の中で


僕は嬉しくなった。



はじめて言われる言葉に心を踊らせる。



僕の目で見た世界をこんな風に言ってくれる人がいるなんて。



ただ、僕の絵は色を使っていない。



彼女の目にはこの絵がどう映っているのだろうか。



「色があるって言ったけど、君の目にはどうみえてる?」



僕は嬉しさを少しだけ抑えてきいた。



「心の目で見るのよ、あなたの絵はすごく優しくて温かいの。優しい色をしてる。」



目の前で艶めかしく微笑む彼女はとても不思議で素敵だと思った。




「、、、ありがとう。嬉しいよ。」



温かい。



珈琲を飲んだからなのか、彼女がそうさせてるのかわからなかった。



「また来てもいいですか?」



「もちろんよ。」



僕はゆっくり立ち上がりお会計をする。




「540円です。一杯は絵を見せてもらったからサービスね。」



彼女はいたずらに笑った。



「ありがとう。近々また来ます。」



「待ってるわ。」




僕はドアを閉めて名前を聞き忘れた事に肩を落として帰るのだった。









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