珈琲の中で
パレットと色
貴瀬の絵は凄い。
貴瀬は自分の絵に色が無いことがネックらしいが周りの奴らは貴瀬の才能を羨んでる。
正直俺も羨ましい。
貴瀬の絵は確かに色が無いが、儚さやその時の空気みたいなものを筆にのせるのだ。
全く恐ろしいやつだ。
授業終わりに自分の絵を思いっきり塗りつぶしたり、ぐちゃぐちゃにする姿を俺は知っている。
周りの奴らの思う壺だ。
気にするなと言っても気にしてしまうのは、
あいつは優しくて素直だからだ。
クールに見えて、根は弱くて子供みたいなのだ。
貴瀬はそれをひたむきに隠したがる。
育った環境のせいでもあるかもしれない。