珈琲の中で
貴瀬は出会った当時なかなか心を開いてくれなかった。
仲良くなった今だからわかるのは、
裕福な家庭で育った貴瀬は小さいながらも大人の参加するパーティーやら、媚をうるやからのせいでわりとひねくれた性格になったという事だ。
仮面を外すのに時間がかかった。
今ではうざい、きもいのオンパレードだ。
「伊月、なにやってんだ。行くぞ。」
うん?今日は機嫌がいいらしい。
心情の変化でもあったのか?
教室の影でふと聞こえた言葉で俺たちは足を止めた。
「やっぱり貴瀬の絵って暗いよな。」
わざとだな。
貴瀬に聞こえるようにわざといいやがった。
俺はそいつらの方に向かおうとしたが、貴瀬に止められた。
いつもなら無表情で出て行く貴瀬だが、
今日はちがった。