珈琲の中で

パレットに色を


伊月と教室を出ようとした時にきこえてきた言葉に俺たちは足を止めた。


「やっぱり貴瀬の絵は暗いよな。」



教室の隅で何人かが俺の絵を見ながら話しているのが目に入った。




あの時の言葉が僕の頭をよぎる。



「心の目で見るのよ、あなたの絵はすごく優しくて温かいの。優しい色をしてる。」



見え方はそれぞれだ。



僕の絵が冷たく見える人もいれば、温かいと言ってくれるひともいる。



それに暗く見えることは悪い事じゃない。




こう思えるのは彼女のおかげだろう。




伊月がガンを飛ばしながらあいつらにむかいそうになるのを止めて彼らにゆっくり近く。




「あっ、やべ。聞こえちゃった?でも、気にしなくていいぜ?お前才能あるもんな。」




彼女の言葉を思い出し、自然と頬が緩むのが分かった。



「あぁ、俺の絵には色が無いらしい。だが、それがダメだとはもう思わないんだ。」



そいつらは目を見開いていた。



みるみる顔を赤くして。















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