珈琲の中で
自販機の珈琲



昼は学食で済ませることにした。



午後はつまらない事で有名な先生の授業だ。




自販機で珈琲を選択して口に含む。



やっぱり違う。



淹れたての珈琲と自販機の珈琲はどうしてこうも違うのだろうか。



やはり時間がたっても香りを持続させるのは難しいのだろう。



なかなかあの味は手に入らない。




だが、たからこそ良いのかもしれないな。



なんて事を考えながら、定食Aを選択して伊月の隣に腰掛ける。



「なぁ、貴瀬。今日のお前はどおしちまったんだよ。」



「どうもしてないけど?」



「イケメン度がアップしちまって俺が霞むだろ?やめろよまじで。」



無視しながらトンカツを頬張る。




隣に誰かが座るのがわかった。




見てみると、髪をふわりと巻いて目がくりっとした女子が隣に腰掛けていた。



「あ、あのはじめまして。」



ふわりとシャンプーの香りが香る。



「まさか噂の愛梨ちゃん??」



伊月が隣の女子を見ながら言った。



「、、、噂?なんのですか??」



隣の女子が首をかしげる。



「かわい〜〜。一緒にご飯たべよ〜」



勝手に伊月が喋り出した。



やめろよ。



こういう種類の女子はあまり好きではない。



「いいんですか?ありがとう」



そう言って僕をちらりとみて微笑んだ。



僕は無言でトンカツを頬張る。



「あの、貴瀬君の絵。本当にすごいよね!しかも今日凄くカッコよかったし。何を参考にしたらあんな絵が描けるの??」



描こうと思って描いてるんじゃない。



と言いたかったが、やめた。



無駄な抵抗だと思ったからだ。



「僕は資料をたまにみて参考にしてるんだ。」


完全なる嘘っぱちである。



「へぇー!勉強熱心なんだね!その資料今度かしてもらえないかなぁ?」



「、、うーん。気が向いたらね。」



「本当に?ありがとう!」



貸すとはいっていない。



まぁ。いいか。放っておこう。



僕のピリッとした空気を読みとったのか、伊月が喋り出した。



「愛梨ちゃんごめんね、こいつ無愛想で!今日はちょっとピリピリしてるから気にしないでね!」



とか言っている。



後でしばいてやろう。





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