珈琲の中で
彼女は相変わらず柔らかい笑みを浮かべて、準備をはじめた。
僕はスケッチブックを取り出し描きはじめる。
今日はパーツを描く事を前もって決めていた。
彼女の手を見つめながらゆっくりと鉛筆を走らせる。
しばらくして珈琲の香ばしい香りが僕の手を止めた。
「お待たせてしました。今日のケーキセットはタルトタタンです。」
コックリと煮詰まった果肉が光り輝いていてとても美味しそうだ。
「ありがとう。」
「今日は手を描くのね。」
彼女はいつもみたいに微笑む。
「そうなんだ。後でモデルやってもらうないかな?」
「おっ?手のモデル?いいわよ。」
僕のこころはこのたった一言で踊っていた。
「ありがとう。食べ終わったら声かけるよ。」
「えぇ。わかったわ。」
僕はタルトタタンと珈琲を堪能した。