珈琲の中で
タルトタタンの味
まだ明るい昼過ぎに店のドアが開いた。
ガチャ
「あら、いらっしゃい。」
「どうも。」
今日も相変わらずの美少年君。
どうやら今日は手を描くようだ。
彼が食べ終わるまで、皿洗いやら、お客様の対応やらを済ませる。
だいぶ落ち着いた頃、彼に視線をうつすとふと視線が交わる、、、なんて事はない。
彼は私の手に夢中である。
自分の手を見つめる。
なかなかいい手をしていると思う。
あかぎれだらけの手を見ながら思った。
彼は私の手を視線で愛でる。
優しく優しく。
なんだか誰かに私の手を自慢したい気分だ。
やっと視線が交わる。
彼は微笑んだ。
「集中しちゃいました。」
「なんだか、自分の手に嫉妬しちゃったわ。」
彼は少しだけ顔を赤くして満面の笑みを浮かべた。