甘やかして、私だけ





「あの本ってやたら諦めが肝心とか書かれてるじゃん」




そうだ、あの本に書かれていた、引き際という言葉に怯えて私は今ここにいるんだった…





「俺、あかねちゃんを諦めるとか考えたことないもん」




だからあの本意味なかった!



とすがすがしく言い切る将くんに私はいつから惹かれていたんだっけ・・・







「だから、あかねちゃんはいつも通りいいんだよ」




そんなとびきり甘やかした言葉を私に言ってくれるのはこの人ぐらいなんだろうな



私は愛くるしい感情に駆られ動き出す



「将くんっ…!!」


「うわっ!」



大好きな人の大好きな胸に飛び込む




やっぱり、今日来なかった方がよかったかも



だって、





「早く帰って来てね!」


「え?」





離れたくなくなってしまったから・・・




お昼休みが生きてきた中で一番短く感じる



本当に自分にこんな気持ちが湧くなんて思いもしなかったよ…




よし!


自分のためにもここは一発彼女らしく送り出そう!!





「将くん、午後からもお仕事頑張ってね!」



チュッと口づけたのは将くんの頬で



あれ、照れてる?レアだね~


戸惑っている将くん意に胸がキュンとなる





「だから、いつも通りでいいって~」


「うふふ、いつも通りだよ。」





いつも通り将くんのことが大好き!!











心地よい風が公園の草木を静かに揺らす



暑い夏の日差しに照らされるのは私の想いと・・・







「将くんもう髪明るくしないのー?」


「しないかな…」


仕事あるしって言い切るなんて…


「真面目かっ」




将くんのさらさらな黒髪でした














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