甘やかして、私だけ


緩まった腕の中で少し振り向くと、拗ねた子供のような顔をした三村くん



「とにかく離れて。お願いだから。」


目の前にいる変態に真顔で言う



「そんな!あかねちゃん真顔でもかわいい!」


はぁぁぁぁ……


三村くんの腕を振りほどいて、正面から言う



「かわいい!とか女の子に言って”えっ…♡”みたいな雰囲気!私、絶対ならないから!」


「違うんだよ!俺はあかねちゃんのことを心配してるの!!」


「ご心配ありがとうございます。これから三村くんを含めた男の人を安易に自宅に入れないようにします。」


「俺はいいの!」



はぁ!?何の理由があって自分だけいいなんて言ってんの




「だって俺は、あかねちゃんのこと・・・」


また急に真顔になる三村くん


やっぱり今はまだ言わない!!とか急に大声を出してブンブン頭を振っている



奇行がすぎるよ三村くん……



「俺もう帰るね!」



次はなによ…さっきは帰りたくないとか言ってたくせに




そそくさと帰る準備をした三村くんは、また私の前に立った


「っ……‼」

伸ばされた三村くんの手が私の頬にやさしく触れた


「…あかねちゃん、また俺と会ってくれる?」




まるで、もう会えない。みたいなしんみりした空気をまとった彼に一瞬、驚いた



でも、悲しそうな顔をしているのに、私を見つめる眼差しはとっても優しい




そんな三村くんがなんだかおかしい



「ふふっ、もちろん!」

つい、噴き出してしまった私を見て、キョトンとした顔になる三村くん




「今日のお礼もしたし、いつかね?いつかまた会おう!」

私に触れている三村くんの右手の小指に私の小指を絡ませる


約束っ!


そういって三村くんを見るも、目を合わせてくれない


「俺らもう大人だよ?」


そっぽを向いている三村くん


なんだ、照れているんだ

っていう割には、私の小指を握り返してくれる



その仕草に自然とまた笑みがこぼれると


「じゃあ、俺、帰るよ。おやすみ、あかねちゃん」


「…‼そこまで送るよ」


「だ~め!夜道は危ないからね、戸締りもきちんとするんだよ」




思ったより突然にそっけなく帰ってしまった三村くん

ほんと、つかみどころのない人だなぁ……











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