私の失恋の行き着く先は…No.4


「それは忘れられない人ってことですね~」

「まぁ、そうかな」

「長年、鈴森課長がフリーな謎が解けました」

「なんだ、それ」

「課長ほどの人にどうして浮いた噂ひとつないのか、不思議で仕方なかったんですけど、納得しました」

「そうか」

鈴森課長の笑い声が私の心を一層悲しくさせた。

いつもより早く出勤して、コーヒー片手に経営戦略部のフロアに入ろうとした時、中から聞こえてきた会話に足が止まった。

鈴森課長と仙道くんは並んで窓の外を見ながら会話しているので、私の存在には気づいていない。

私の頭の中で「忘れられない人」という言葉が何度も繰り返される。

コーヒーを持つ手が震えているのに気づき、私は足音をたてないようにゆっくりと踵を返した。

< 6 / 35 >

この作品をシェア

pagetop