エリート上司の甘く危険な独占欲
「なに言ってるんだ。ちょうど二週間前の金曜日だ。俺は、華奈がおまえの同期の今川(いまがわ)ってやつと二人で居酒屋に入っていくのをこの目で見た」

 華奈は慌てて釈明する。

「それは誤解だよっ。あれは同期会! 私と今川くんだけ仕事が遅くなっちゃって、たまたまエレベーターで一緒になったから、そのまま二人で店に行っただけ。店の中にはほかの同期が四人もいたんだから!」

 それは本当のことだった。フィーカに同期として入社した社員は、華奈を含めて全国に三十人いた。そのうち大阪本社に配属された六人は特に仲がよく、年に数回、同期会を開いている。

「どうだかな」
「どうして信じてくれないの?」
「事実はどうであれ、俺を不愉快にさせたことには変わりはない」
「そんな……ごめんなさい。柊一郎さんがいやだって言うなら、男性と二人きりで歩いたりしないようにする。だから」

 考え直して、という華奈の言葉に、柊一郎が言葉を被せる。

「やっぱり付き合う女と結婚する女は別だよ。華奈みたいに派手で目立つ軽い女じゃなく、控えめで俺を立ててくれるような女でなきゃ。なんてったって俺はフィーカの幹部候補だからな」
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