エリート上司の甘く危険な独占欲
 麻衣は小さく口を開け、ぽかんとした表情をしている。

(え、ショックが大きすぎた?)

 純真な麻衣には正気を失うような裏切りだったのかもしれない。どうしたらいいのかわからず、華奈は左手を口元に当てた。華奈のうろたえた様子を見て、麻衣が数回瞬きをした。

「『過去に二回、そういう関係になってしまった』って、いったいどういう関係のことですか?」
「え、ど、どういうって……。あの、部長が麻衣ちゃんと付き合ってるって知らなくて、その……寝……ちゃっ……た……んだ」

 最後は消え入りそうな声になった。麻衣はまた瞬きをする。

「私、部長とは付き合ってませんよ」
「え? ええっ!?」

 今度は華奈が瞬きをした。

「私、華奈さんに説明してませんでしたっけ……? 確か火曜日に、一之瀬部長のことを『颯真くん』って呼んじゃって、それを説明しようとして……」

 途中で梓に会って話がそこで途切れたことを思い出したらしい。麻衣は小さく舌を出した。

「私、説明してませんでしたね」
「説明ってなにを?」
「実は颯真くんは私の従兄(いとこ)なんです」
「従兄?」

 華奈は小さく口を開けた。
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