エリート上司の甘く危険な独占欲
「はい。母の兄の長男が颯真くんです。私、就職活動で失敗しちゃって、就職先が決まらなくて……それで、なんていうか、颯真くんにちょっとお願いして……ちょうど貿易管理部の人が急に退職することになったから、雇ってもらえたんです……。でも、やっぱりコネ入社みたいでいやだから、颯真くんと従兄ってことは秘密にしてもらってたんです」
「え、そ、そうなんだ」

 華奈は膝から力が抜けそうで、カエデの幹に手をついた。

「はい。華奈さんにはいつも優しく指導してもらって……華奈さんは私の憧れなんです。華奈さんに失望されたくなくて、黙ってました」
「そ、そうだったんだ」

 華奈はついに立っていられなくなり、その場に座り込んだ。麻衣が華奈の隣にしゃがむ。

「颯真くんは自慢の従兄だし、華奈さんは憧れの先輩だし、お二人が付き合ったらステキだな~って思ってたんです。だけど、付き合ってるわけじゃなかったんですか?」
「わかんない」

 麻衣を裏切っていたわけではなかったことに安堵したからか、涙が込み上げてきて、華奈はかすれた声で答えた。

「わかんないってどういうことですか?」
「だって、“好きだ”とも“付き合おう”とも言われてないんだもん……」
「華奈さんは?」
「え?」
「華奈さんは颯真くんのこと好きなんですか?」
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