エリート上司の甘く危険な独占欲
「だからって大切な言葉はちゃんと言葉にしなくちゃ伝わらないですよね。颯真くんってば、華奈さんから連絡がないからって、私がちゃんと付箋のことを伝えてないんだって疑ったんですよ! 華奈さん、なんとかしてください!」
「なんとかって……」

 麻衣は強い調子で言う。

「私、確信してるんです。颯真くんは華菜さんのことがきっと好きです。そうじゃなかったら、華奈さんが具合が悪くて連絡できないんじゃないかとか、心配してメールしてきませんよ!」
「でも、忘れてくれって言われたんだよ?」

 華奈はチラッと麻衣を見た。麻衣は難しそうな顔をする。

「むー。そんなこと言うはずないと思うんですけど。従兄だから言うわけじゃありませんが、そもそもそんなことを言うような人じゃないはずですし。それに仮に言ったとしても、それなら二度目があるはずがありません」
「そうかなぁ」

 華奈はまた顎を膝にうずめた。確かにこの耳で聞いたのだ。

 麻衣の悲しそうな声が降ってくる。

「華奈さんは私と颯真くんが付き合ってるんだって思って、きっとすごくつらかったですよね。ごめんなさい。私がちゃんと説明すればよかったんですけど……。あれ、でも、これじゃ、私が二人の恋路を邪魔したみたい?」
「え、そんなこと……」

 華奈が顔を上げると、麻衣はにこーっと笑った。
< 112 / 161 >

この作品をシェア

pagetop