エリート上司の甘く危険な独占欲
 健太は華奈の前に歩み寄った。ネイビーのスーツ姿で、両手をポケットに突っ込んでいる。

「どうしたの? もしかしてメッセージに気づかなかった?」

 華奈は木の幹から体を起こそうとした。だが、それより早く、健太が華奈を囲うように顔の横に両手をついた。

「気づいたよ」

 彼の声は低かった。横から街灯の明かりに照らされた彼の顔は、激しい怒りをたたえているように見えて、華奈は反射的に身をすくませる。

「じゃ、じゃあ、いったいどうしたの?」
「華奈のこと、俺はやっぱりちゃんとわかってなかったな」
「なにが?」
「ああやってドタキャンするのは俺を焦らすためなんだな」
「え、違うよ。あれは本当に悪いと思ってる……」

 健太が華奈に顔を近づけた。すぐ前で健太が目をぎらつかせる。

「牧野に言われてたのを忘れてたよ。華奈は強引なのが好きなんだよな。人前でキスされないと燃えない、そういう女だったんだ。なんならここで最後までヤるか? 誰かに見られるかもしれないってのは、さぞ興奮するんだろうな」
「健太……」

 華奈は心底悲しい気持ちで彼の名前をつぶやいた。
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