エリート上司の甘く危険な独占欲
「なにやってる」

 颯真は健太の肩を掴む手にギリッと力を込めた。健太が痛そうに顔を歪める。

「あんた……誰だ……」
「華奈に惚れてる男だよ」

 颯真は健太の肩を押しやり、華奈をかばうように前に立った。

「へえ……これはまたすごいイケメンだな」

 健太は嘲るように笑った。

「なるほど、手が込んでる。俺をその気にさせてドタキャンし、こうやってピンチを演出して本命に助けてもらうってわけだな。これはもう恐れ入るしかないな」

 颯真が厳しい口調で言う。

「あんた、俺の話をちゃんと聞いてたか? 俺は『華奈に惚れてる男だ』って言ったんだ。『華奈が惚れてる男』じゃない」

「な……」

 健太が言葉に詰まった。

「それに言わせてもらえば、華奈はあんたの言うようなくだらない“演技”はしない。あんたのことにはまったく興味はないが、その思い込みだらけの思考回路をなんとかするよう、同じ男として忠告する。今後、性懲りもなく同じことを華奈にしようとしたり、華奈を侮辱したりしてみろ。俺が黙っちゃいないからな」

 長身の颯真が一歩健太に近づき、その迫力にすごんだように健太は一歩後ずさった。
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