エリート上司の甘く危険な独占欲
「わ、悪かったよ……。俺の出る幕じゃないようだし、退散するよ」
「華奈の連絡先を削除しておけ。二度と華奈に近づくな」
「わ、わかった」

 健太は言って、オフィスビルの敷地からそそくさと姿を消した。

 颯真は大きく息を吐いた。

「華奈も大変だな」

 颯真は言って振り返った。華奈が不安とショックから目に涙を浮かべているのを見て、彼女の肩に手を回す。

「送っていく」
「あ、りがとうございます」

 華菜はこぼれそうな涙をぬぐった。

(あんな健太、見たくなかった。再会したときは、付き合う前の友達だった頃に戻れたようで嬉しかったのに)

 だが、それこそ彼の演技だったのだろう。

 颯真に肩を抱かれたまま、華奈は地下の駐車場に案内された。彼がSUVの助手席のドアを開けてくれる。

「どうぞ」
「ありがとうございます」

 華奈は座席に座ってシートベルトを締めた。颯真が運転席に乗り込んでエンジンをかける。この前と同じジャズが流れてきて、華奈はなぜだかホッとした。

「出発するよ」

 颯真はシートベルトをしながら言った。

「はい」
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