エリート上司の甘く危険な独占欲
「ちょっと待て」

　颯真は記憶をたどるように少し黙ってから口を開く。

「あれは別れて間もないから難しいかもしれないけれど、佐脇課長のことを『忘れてくれるのなら、その方がいい』って意味で言ったんだ。そうして俺と新しい恋を初めてくれたらなって思った」
「え!?」

　華奈は彼にそう言われたときのことを思い出そうとした。確か彼は、『昨日のことだけど』と話を切り出していた。

「もしかして……『昨日のことだけど』っていうのは、部長との一夜ではなく、課長に振られたこと、だったんですか？」
「そのつもりだったけど……伝わってなかったか」

　颯真が左手で前髪をくしゃりとかき上げた。そうしてまっすぐに華奈を見つめる。

「俺はさっきの男や佐脇課長とも違うつもりだ。同じに見える……というより、彼ら二人よりも軽い男に見えるかもしれないが、華奈への気持ちは本気だ」

　柊一郎に『軽い女』扱いされたことがあれほどいやだったのに、彼と同じことを颯真に対してしてしまっていた。その事実に華奈は打ちのめされる。

「ごめんなさい。私、謝っても謝りきれないくらい、ひどい間違いをしていました。自分が傷ついたのと同じことを、颯真さんに対して……」
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