エリート上司の甘く危険な独占欲
 華奈の唇に颯真がそっと左手の人差し指を立てて当てた。

「だから言っただろ。俺たちは『同じように感じ合える』って」

 温もりのこもったその声を聞いて、華奈は目が覚めるような思いだった。『同じように感じ合える』のは体のことだけではなかったのだ。心が感じていることも同じようにわかり合える、そういう意味だったのだ。

 信号が青になって、車がゆっくりと動き出す。

「華奈が一度も連絡をくれなかったのは、その誤解のせいだったんだな」
「そうです……」

 華奈は恥ずかしくなって膝の上で重ねた手に視線を落とした。

「でも、実はそれだけじゃないです。麻衣ちゃんが颯真さんの従妹だって知らなくて、颯真さんは華奈ちゃんと付き合ってるんだって思い込んでました」

 颯真は苦笑をこぼした。

「よりによって麻衣とか。赤ちゃんの頃から知ってる、妹のような存在なのにな」
「ごめんなさい!」

 華奈は颯真の顔が見られず、自分の手を見つめたまま頭を下げた。颯真は左手を伸ばして、華奈の手を一度軽く撫でる。
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