エリート上司の甘く危険な独占欲
「それじゃ、さっきのやつに『華奈に惚れてる男だ』って言ったけど、華奈の恋人だって堂々と宣言してもよかったんだな」

 華奈はそっと運転席を見た。

「私なんかのために……ホントにそんなふうに思ってくれてるんですか……?」

 それは疑問というより確認の言葉だったが、颯真の横顔がムッとする。

「まだ俺の言葉が信じられない?」
「原因は颯真さんじゃなくて、私なんです。自信が持てないっていうか……」

 颯真の目つきが鋭くなったのが、助手席から見ていてもわかった。華奈が煮え切らない態度なので、気を悪くしたのかもしれない。

(どうしよう……)

 せっかく彼と気持ちが通じ合えたと思ったのに。けれど、柊一郎と健太に投げつけられた言葉の数々が、胸に巣くって華奈を不安にするのだ。

(どうすればいい?)

 謝る? もう一度説明する? それとも二人の言葉は自分でどうにか乗り越える?

 迷っていると時間が経つのが早い。もう前方に華奈のマンションが見えてきた。来客用駐車場に停車して、颯真が言葉を発する。

「あれこれ難しく考えるからダメなのかもしれないな」
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