エリート上司の甘く危険な独占欲
第十章　エンゲージメント
　それから週末を互いの家で過ごす日々が七ヵ月ほど続いた十一月中旬の金曜日。華奈は仕事を終えて、ロッカールームに向かった。先にロッカールームにいた麻衣が「お疲れさまです」と声をかける。

「お疲れさま」

　麻衣はロッカーを閉めて華奈に言う。

「華奈さん、たまには一緒にランチに行きましょうねっ」
「もちろん。いつでも言ってね。ちゃんと麻衣ちゃんを優先するから」
「ホントですよぉ。颯真くんばっかり華奈さんを独り占めするなんて。妬いちゃいます」

　麻衣がいたずらっぽく笑い、華奈はつられて微笑んだ。

　颯真が健太を撃退してくれたあと、華奈の肩を抱いて駐車場に行くところを、フィーカの社員が目撃していたらしい。初めのうちは『どうせすぐに別れるって』と妬みや嫉妬のこもった陰口を叩く者もいたが、颯真がランチタイムに毎日のように華奈を迎えに来たり、二人が仲良く一緒に帰ったりするのを見るうちに、そういう心ない言葉は聞かれなくなった。そして、二人は今では社内公認のベスト・カップルになっている。

　華奈はハンガーに掛けていたアイボリーのロングコートを羽織った。
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