エリート上司の甘く危険な独占欲
(彼の腕の中に女性がいたらどうしよう)

 華奈の心臓は破れそうなくらい大きな音を立てていた。華奈はそっと毛布をめくる。

 ベッドに横になっていたのは颯真一人だった。

「颯真さん?」

 呼びかけたが反応はない。華奈はベッドに膝をのせて、そうっと颯真の顔を覗き込んだ。

「えっ」

 彼は苦しそうに眉を寄せた表情で、浅く呼吸をしながら眠っている。

 華奈はそっと手を伸ばして颯真の額に触れた。

(熱っ)

 かなり熱が高そうだ。

 颯真の部屋には何度も来ているが、体温計があるのかどうかもわからない。

 華奈はタオルを濡らして颯真の額に置くと、鍵をかけて部屋を出た。駅前まで戻って、ドラッグストアで体温計と冷却シート、スポーツ飲料と解熱剤を購入する。

 急いで部屋に戻り、颯真の額に冷却シートを貼った。

(確か、首の血管のところを冷やすと気持ちいいんだよね)

 華奈が透明フィルムを剥がして冷却シートを颯真の頸動脈の辺りに当てたとき、颯真がビクリと体を動かした。

「あ、ごめん。冷たかった? でも、首の血管を冷やすと、全身に冷たい血が流れるから効果的なんだって」
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