エリート上司の甘く危険な独占欲
 颯真が寝返りを打って華奈の方を見た。

「うつしたらいけないから……来るなって言ったのに……」

 彼の声は苦しそうにかすれている。

「あんなメッセージ、逆に心配しちゃうよ」

 華奈は颯真の手を握った。びっくりするくらい熱くて、その熱を吸い取ってあげたいと思いながら、華奈は両手で彼の手をギュッと包み込んだ。

 とんでもない誤解をしていたことは、自分の胸に秘めておく。とはいえ、彼が苦しそうなのは見ていてつらい。

「ねえ、私たち、楽しい時間を共有するためだけに付き合ってるのかな?」
「え……」

 颯真がぼんやりと華奈を見た。

「颯真さんと一緒にいるとすごく嬉しいし、なにをしても楽しいし、幸せだなって思う。でも、颯真さんが私を助けてくれたように、私だって颯真さんを助けたい。助けられるばかりなんて、いやだよ……」

 颯真は小さく口元に笑みを浮かべ、空いている手を華奈の頬に伸ばした。

「華奈には……かっこ悪いところ、見られたくなかったのにな」
「やだ。颯真さんの全部が見たい」
「すっげー口説き文句だな」
「え、そ、そう?」

 華奈はドギマギしながら、目でローテーブルの上を示す。
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