エリート上司の甘く危険な独占欲
「とりあえず水分補給をしよう」
「ありがとう。華奈がいてくれたらすぐによくなりそうだ」

 華奈はペットボトルのドリンクをコップに移して颯真に渡した。彼は体を起してドリンクと、そのあと解熱剤を飲んで、毛布に潜り込む。

「華奈」
「なぁに?」
「華奈にお休みのキスをしたいけど、うつしたらいけないし、華奈がして。唇じゃなくていいから」

 少し眉を寄せた切なげな表情で、熱で潤んだ瞳で見上げられ、華奈の心臓が小さく跳ねる。

(た、ただでさえフェロモンだだ漏れなのに、熱がある状態で、なにこの色気……)

 華奈はドギマギしながら、颯真の頬に軽く唇を触れさせた。

「もっと」
「えっ」

 颯真にねだるように見つめられ、華奈は体温が上がるのを感じる。

(こ、これじゃ、私まで熱が上がりそう……)

 そんなことを思いながら、彼のまぶたにそっとキスを落とす。

「ゆっくり休んで、早く元気になってね」
「ありがとう」

 颯真の唇がゆっくりと弧を描き、安心したように微笑んだ。ほどなくして彼が、華奈が来たときよりも穏やかな寝息を立て始め、華奈はホッと肩の力を抜いた。




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