エリート上司の甘く危険な独占欲
 やがて唇を離して、颯真が華奈の頬を両手で包み込んだ。

「華奈がそばにいてくれて、本当によかった」

 颯真が穏やかに微笑み、華奈は幸せな気持ちで笑みを返した。



 それから一週間後の土曜日。華奈は颯真と一緒に京都に紅葉を見に行った。JR京都駅にも近く、五重塔で有名な東寺は、日本人だけでなく観光客でもごった返していた。紅葉を堪能したあと、空いていたベンチに並んで座った。今日はヒールの高くないブーツを履いていたが、さすがに歩き疲れて、華奈は脚を伸ばした。

「なにか飲み物を買ってくるよ」

 颯真が立ち上がった。今日の彼はカーキのジャケットと細身のブラックパンツというカジュアルながらもスタイリッシュなコーディネートだ。

「お願い」
「コーヒー?」
「うん、ブラックでね」
「了解」

 颯真の姿が人混みに見えなくなり、華奈はお尻の後ろに手をついて空を見上げた。空にうっすらと雲がかかっていたが、西の空に沈みかけた夕日を受けて淡いオレンジ色に染まり始めている。
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