エリート上司の甘く危険な独占欲

「Excuse me.」

　耳元で突然若い男性の声がして、華奈はハッとそちらを見た。大きなバックパックを背負った二十代半ばくらいの外国人の金髪の男性が、すこし不安そうな面持ちで華奈に話しかけていた。

「May I help you?」

　華奈が英語で応じたので、男性はホッとしたように表情を緩め、英語で話を続ける。

『このユースホステルに行きたいんですが、どこでバスに乗ればいいですか？　スマホの充電が切れてしまって、マップが見られないんです』

　男性が困ったように言って、ユースホステルのパンフレットと紙の地図を差し出した。

『ええと……』

　華奈は渡された英語の地図を見ながら考える。

『ここからだったら、いったん京都駅に戻った方がいいですね。そこからバスが出ています』
『ユースホステルに荷物を置いてから金閣寺に行きたいんですが、間に合いますか？』
『あー、どうかな。十七時閉門ってなってるので、今日は難しそうですね』

　男性は残念そうな顔になる。

『それじゃ、ほかに行けそうなところはありますか？』
『ライトアップしているお寺なら、今からでも行けますよ』