エリート上司の甘く危険な独占欲
 華奈がいくつか地図上の寺を示すと、男性は笑顔になった。

『ありがとう』

 礼を言って、華奈をまじまじと見る。

『お一人で来てるんですか?』

 男性が言った直後、華奈は背後から左腕を掴まれた。そしてそのまま強引に立たされる。顔を向けると颯真が立っていた。

「あ、颯真さん」

 颯真は華奈の腕を引いて背中に隠すと、仏頂面で男性を見た。颯真とその外国人男性は同じくらいの身長だ。

『彼女は俺と来ています』

 外国人男性は『ああ』と声を出した。

『残念です。彼女みたいな親切で美しい女性と一緒に観光したら、きっといい思い出になるでしょうね』
『そうですね。いい思い出を作るつもりです』

 颯真がきっぱりと言い、華奈は彼の陰からひょこっと顔を出す。

『美しい紅葉を見て、ぜひ日本のいい思い出にしてくださいね』
「ドモアリガトゴザイマス」
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