エリート上司の甘く危険な独占欲
 男性は微笑んで、華奈と颯真にぎこちない仕草ながらお辞儀をした。

「Have a nice trip.」

 男性を見送ってから、颯真は華奈に向き直った。

「あいつ、結構いい男だったな」
「そうだね、ちょっとハリウッド俳優に似てたかも。ほら、最近、映画で主演してた――」

 華奈が俳優の名前を挙げ、颯真の口の端がピクリと動いた。

「華奈はもし一人で来てたら、さっきの観光客を案内してあげた?」
「困ってるみたいだったしね……」

 華奈は迷うように答えた。困っている人なら助けてあげたいとは思う。

「いくら相手が困っていても、男と二人きりって言うのは心配だな」

 颯真の独占欲がにじんだ言葉に、華奈は「えっ」と声を上げた。

 颯真は華奈の左手を取る。

「華奈は俺のものだってわかってる?」

 彼に左手を持ち上げられ、薬指にチュッとキスが落とされた。チラリと上目遣いで視線を投げられ、付き合って七ヵ月経つというのに、その色気に胸を射貫かれる。

「も、ちろん」
「ふぅん」
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